筆跡鑑定
手書き文字については、字画構成・形態、筆順、運筆方法や誤字などを始めとした各種の検査を行いながら、相互に比較対照する筆跡が同じ人によって書かれたものであるか否かを異同識別するものであって、専門用語としては「筆者識別」と呼ばれています。
筆跡は、個人内における恒常性と個人差および稀少性が大前提となって鑑定が行われるのであります。したがって、比較対照する文中には字体と書体が同じ文字で書かれていることが最も重要で、それらの条件が十分でない資料では鑑定が難しいか、あるいは不可能であります。
以上の条件が満たされたものであっても、鑑定は筆跡の原本で行うことが必要でありますが、やむを得ない場合でコピーや複写紙などのような複製文書による筆跡鑑定では、結果の精度が著しく低下することもやむを得ないことであります。
伝票や預貯金払戻請求書、クレジットカード使用時に署名する売上伝票類のように署名欄のあるものは、署名枠と署名の位置や署名枠と文字の大きさの関係が筆者の特徴となります。
【科学的証明による証拠】 筆跡鑑定は、最高裁昭和41年2月21日第二小法廷決定(昭和40年(あ)第238号脅迫被告事件)(判例時報450号60頁)によっても科学的証明による証拠として取り扱われています。その詳細については、別冊ジュリストNo.148/AUGUST1998 刑事訴訟法判例百選「第七版」の第五▼証拠で、東京地裁判事 山崎 学によって解説されているとおりであります。
ところで、山崎判事のまとめの項「五」を抜粋すると次のようであります。
「一般に筆跡鑑定にどこまでの証明力を認めることができるであろうか。これは、筆跡鑑定が唯一の証拠である場合に、被告人を有罪とできるかという問題に集約される。これは、結局のところ、個々の鑑定の対象たる筆跡と鑑定の方法・技術によって異なるというほかないが、科学性の高い方法・技術によって、希少性、常同性および相同性が極めて高く、相違性が極めて低いと認められる場合には、高い証明力を肯定することができ、筆跡鑑定を唯一の証拠として被告人を有罪とすることも可能である・・・・・・・・」としている。
※別冊ジュリスト№148 AUGUST 1998刑事訴訟法判例百選【第七版】松尾浩也・井上正仁[編]「いわゆる伝統的筆跡鑑定方法は、多分に鑑定人の経験と感〔勘〕に頼るところがあり、ことの性質上、その証明力には限界があるとしても、そのことから直ちに、この鑑定方法が非科学的で、不合理であるということはできないのであって、筆跡鑑定におけるこれまでの経験の集積と、その経験によって裏付けられた判断は、鑑定人の単なる主観にすぎないもの、といえないことはもちろんである。」
とし、
「また最近では、コンピュ-タ-等の発達に伴い、多くの研究成果が発表されているので、筆跡鑑定の精度は今後とも更に高まっていくと期待している・・・」
と述べられています。 証拠 科学的証明 :最高裁昭和41年2月21日第二小法廷決定(昭和40年(あ)第238号脅迫被告事件)(判例時報450号60頁)について、東京地方裁判所判事山崎学殿による解説文を紹介いたしました〈決定要旨〉。